溺愛モラトリアム 【SPシリーズ新城編】
「監視されながらメシ食ったって、味わかんないよ。一ノ瀬ちゃん、ちょっと出ようよ。最上階にバーラウンジがあるらしいから、そこで一杯……」
「いりません」
やたらと話しかけてくる議員に素っ気なく返事をしていると、三田さんがおろおろして言う。
「やめてくださいよ。昨日もそうして大した用事でもないのに出かけようとして、襲撃されたんでしょう?」
そうそう、そのとおり。
「危険があったって、一ノ瀬ちゃんがいれば大丈夫だよ」
そういう問題じゃないって。
「議員、俺たちSPはあなたを危険から守るのも仕事ですが、そもそも危険から遠ざけて事件を起こさせないようにするのが仕事なんです。ご理解ください」
新城さんが淡々と言うと、バカ息子はチッとお育ちにあわない下品な舌打ちをした。
「なんだよお前。態度悪いぞ」
「どこがでしょうか」
言い返され、バカ息子は喉を詰まらせる。
たしかに新城さんは真面目に警護をしているだけで、正論しか言っていない。
「もしかして、お前一ノ瀬ちゃんの彼氏なのか?オフィスラブとかいうやつか?」
バカ息子があまりに的外れなことを言うので、思わずベリーロールで倒れそうになってしまった。