溺愛モラトリアム 【SPシリーズ新城編】
交代の時間になったのは、もうすぐ日付が変わろうかというときだった。
バカ息子は私に『一緒にベッドに入れ』だとか、最後まで意味のわからないことを言っていた。
もしかして、テロリストに襲われたショックで頭がおかしくなってしまったのか?
とにかく、本人は既に眠りについていて、交代できた矢作さんと大西さんはほっとした顔をしていた。
ちなみに、明日のスケジュールの打ち合わせなどをした三田さんは、疲れた顔で2時間ほど前に帰宅済み。
「俺はこのあと休憩で……明け方に交代か。お前はこのまま帰宅、明日は非番だってよ」
新城さんがスマホでシフト表を確認しながら言う。
「お休み、ですか」
なんか、私ばっかり優遇されてるようで気が引けるなあ……。
でもしかたないか。班長が決めたことだし。
それより、やっと新城さんと二人きりになったんだ。
例のことを追求しなくちゃ。
「あの、新城さん。新城さんは人やモノの記憶が読めるって、本当ですか?」
ホテルのロビーで単刀直入に聞くと、唐突だったのか、新城さんは一瞬はっとしたような顔をした。
けれど次の瞬間には、いつものクールな表情に戻る。
「ああ……あいつらに聞いたのか」
「本当ですか」
「まあな」