溺愛モラトリアム 【SPシリーズ新城編】
ダークブラックにピンストライプが入ったスーツの背中についていく。
途中、廊下ですれ違った事務員らしき女性がこちらを振り返った。
気のせいかと思ったけど、その後も同じようなことが繰り返し起きた。
どうやら、新城さんの王子の異名は伊達じゃないらしい。
彼は装備課のドアをノックし、中に入っていく。
私もそのあとに続いた。
「あら、聖(こうき)くん!待ってたわよ~」
青い制服を着たふくよかな中年女性がのしのしと近づいてきた。
チークを塗りすぎたピンクのほっぺたが、お肉でぷるぷるしている。
「どうも。警護課です。頼んでおいたもの、許可下りました?」
「はいはい。新人SPさんの装備品ね。ちゃんと来てるわよ。ちょっと待ってね」
中年女性は私の方をちらっと見ると、奥の鍵がかかっている厳重な扉の中へと入っていく。
少し待っていると、彼女が重そうな箱を持って戻ってきた。
「はい、これ。全部チェックして、これに印鑑押してって」
「はい」
机の上で新城さんは箱の中身を確かめる。
その中には新しい警棒や無線機、手錠などがそれぞれ新しい箱に入った状態で入っていた。
「ありがとうございました」
新城さんにならって会釈すると、中年女性が私に言った。