溺愛モラトリアム 【SPシリーズ新城編】


ダークブラックにピンストライプが入ったスーツの背中についていく。

途中、廊下ですれ違った事務員らしき女性がこちらを振り返った。

気のせいかと思ったけど、その後も同じようなことが繰り返し起きた。

どうやら、新城さんの王子の異名は伊達じゃないらしい。

彼は装備課のドアをノックし、中に入っていく。

私もそのあとに続いた。


「あら、聖(こうき)くん!待ってたわよ~」


青い制服を着たふくよかな中年女性がのしのしと近づいてきた。

チークを塗りすぎたピンクのほっぺたが、お肉でぷるぷるしている。


「どうも。警護課です。頼んでおいたもの、許可下りました?」

「はいはい。新人SPさんの装備品ね。ちゃんと来てるわよ。ちょっと待ってね」


中年女性は私の方をちらっと見ると、奥の鍵がかかっている厳重な扉の中へと入っていく。

少し待っていると、彼女が重そうな箱を持って戻ってきた。


「はい、これ。全部チェックして、これに印鑑押してって」

「はい」


机の上で新城さんは箱の中身を確かめる。

その中には新しい警棒や無線機、手錠などがそれぞれ新しい箱に入った状態で入っていた。


「ありがとうございました」


新城さんにならって会釈すると、中年女性が私に言った。


< 7 / 279 >

この作品をシェア

pagetop