溺愛モラトリアム 【SPシリーズ新城編】
「女の子なのにSPなんて大変ね。綺麗な顔に傷を付けないように気をつけるのよ」
そんな言葉とは裏腹に、視線はまるで心配なんかしていない。
まるで私を品定めするかのように、頭のてっぺんからからつま先まで、じろじろと見てくる。
女性SPが珍しいのか、お気に入りの男の子と同じ部署に配属されたから、けん制しているのか。どっちにしても、私には関係ない。どうでもいい。
新城さんが箱を持ってくれたので、私はドアを開ける。
中年女性に対しては特に返事もせず、会釈だけしてその場を去った。
ドアを閉める瞬間、「気取ってるわね~!女のくせにSPになるんだもん、やっぱり生意気な子なのよね」と女性が同僚の誰かに話しかけるような声が聞こえてきた。
「気にするなよ」
「しませんよ」
昔から男子よりも背が高くて目立っていたから、「生意気」と言われることには慣れている。
それでも中学や高校では、後輩の女の子にバレンタインチョコをもらったりしたもんだけどな。
最近は女性からの風当たりもなんだか強いような気がする。
周りも夢見る年頃を過ぎてしまったからだろうか。
「銃だけは、任務が決まってから保管庫な。前はどこにいたんだっけ?」
「機動隊です」
「へえ」