溺愛モラトリアム 【SPシリーズ新城編】
やがて支払いが済み、パーティー会場に向かう準備が整った。
車の運転席には新城さん、助手席には大西さん、後部座席の国分議員の隣が私。
私はやたらと触ってこようとする国分議員の手をつねりながら、ずっと前を見ていた。
警護中の新城さんの目は真剣そのもので、さっきとは別人みたい。
さっき……どうして私、目をつむったんだろう。
彼のキスを、受け入れてしまったんだろう。
頬にこもった熱を思い出してぼんやりしていると、バックミラー越しに新城さんと目があってしまった。
「一ノ瀬、集中しろ」
一言、最短のお説教をいただいてしまった。
その通りだ。警護に集中しなきゃ。
私はさっきのキスを頭から懸命に追い出そうとし、何度も失敗した。
どうしよう。私はこんなに弱くないはずなのに。
マルタイを守るために、強くなきゃいけないのに。