溺愛モラトリアム 【SPシリーズ新城編】
5.とんだ休日出勤
事件現場……じゃなかった、パーティー会場の老舗一流ホテルに着くと、高浜さんと矢作さんが待機していた。
「あれ?一ノ瀬さん?」
私の姿を見て、目をぱちくりさせる高浜さん。
「お前何してんの?」
「同伴者とみせかけた警護です」
矢作さんの問いかけに真面目に答えると、同情された。
「こんなSPだらけの会場で、どうして変装が必要なんだよ。着せ替え人形にされただけだろ」
うっ。そんなのわかっていたけど、面と向かって言われるとすごく自分がおバカに思える……。
「まあまあ、いいじゃないか。さ、行こう一ノ瀬ちゃん。他のSPは壁際で見てろよ」
「言われなくてもそうするよ」
冷ややかな目で国分議員を見つめる矢作さん。
大広間には、やけに着飾った人々がどんどん入っていく。
その顔の中には、いくつかテレビや新聞で見たことがあるものも。
その人たちの民間SPと思われるスーツの男の人も何人かいた。
ほんと、SPだらけだわ。
「あのう、聞くのを忘れていたんですが、これは何のパーティーなんでしょうか」
「あー。えっと、なんだっけ?」
「財務大臣の娘さんのお誕生日会です」
「だって」
三田さんに答えさせてる。招待されたのに覚えてないってどれだけなの。
そして、きっともう良い歳であろうお嬢さんの誕生日会って。
小学生じゃないんだから、そんなに盛大にやる必要ある?