溺愛モラトリアム 【SPシリーズ新城編】
「大丈夫。こんなの、各界から集まった暇人が、自分の顔を広めるのが目的だから。適当に食べてへらへらしてればいいよ」
そう言って差し出された腕を、仕方なくとる。
適当に食べて、適当におしゃべりして……そんなのの何が楽しいんだろう。全然想像がつかない。
産まれて初めて足を踏み入れる大広間の天井には、巨大なシャンデリアがついていた。
足元は絨毯が敷き詰められていて、ヒールではとても歩きにくい。
どうやら立食形式のようで、あちこちにテーブルがあり、それぞれに色々な種類の料理が並べられている。
「じゃあな、SPども!お前らは何も食わずにちゃんと警護してろよ!」
「はいはい」
国分議員の小学生のようなセリフにため息をついたSPたちは、会場のあちこちに散らばっていく。
新城さんの姿を目で追うと、彼は入口の辺りで歩みを止め、広間全体を見回していた。
他のSPたちも場所は違えども、同じようにしている。
そうしているうちに主役らしき女性(やっぱり立派な20代の大人だった)が高段に上がり、一言二言挨拶をすると、議員曰く暇な人たちの交流パーティーが始まった。