溺愛モラトリアム 【SPシリーズ新城編】


ご、御令嬢?

そうか……国分議員の父親は外務大臣で、何年か前には総理大臣も務めた人だった。

そしてここにいる人間はみんな、そういった華麗なる一族に関連した人たち。

何の肩書きもない人間がここにいるはずがないと思っているんだろう。


「秘密です」


国分議員は笑って、そうかわした。

その後も同じように声をかけられ、同じような会話を繰り返す。

たまに議員も全く知らない人が現れたと思えば、名刺交換をして小難しい話をして去っていく。

私はと言えば、気分の悪くなった体を引きずって、力なく隣で笑うだけだった。


「ごめんなさい。本当に気分が悪いので、休ませてください」


人が途切れた瞬間にそう願い出ると、国分議員は眉を下げ、困ったような顔をした。


「仕方ないなあ。じゃあ行っておいで。気分が良くなったらすぐ戻ってよ」


なんだその上から目線。

かちんとして思い切りにらむと、彼の肩越しにまた別の男性が現れた。

その60代と思われる男性には見覚えがある。

白髪交じりの髪はまだふさふさしており、ちょっと鼻と口の間が広くて、馬に似ている……。


「って、国分外務大臣!?」


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