溺愛モラトリアム 【SPシリーズ新城編】
警護課に戻る途中、新城さんからの質問に答えていると、足音が聞こえてきた。
向かってくるのは、班長、高浜さん、矢作さん、大西さんだ。
「あ、新城、ちょうど良かった。今から都知事の警護に行ってくるから」
何だって?都知事の警護?
さっそく任務か!と気合が入りそうになったのに……。
「俺たちは?」
新城さんが聞くと。
「他の班の補充だから、4人いればいいってさ。そういうわけで、お前たちは待機な。何かあったら連絡する」
班長は早口で言い、忙しそうに他のSPたちとその場から去ってしまった。
そんな。おいてけぼりだなんて。
がっかりしながらとぼとぼと特殊班の部屋に戻ると、新城さんが机の上に装備品の箱を置いて言った。
「現場に出たかったか?」
「そりゃあ、せっかく訓練を受けてSPになったんですから。早く一人前になって、成果を出したいです」
「真面目なんだな。大丈夫。警護課は人手不足なんだ。すぐにお呼びがかかるさ」
と言いながら、箱の中身を出して説明しだす。
無線機、手錠、警棒……どれも訓練のときに使ったことがあるもので、目新しさはなかった。
「そうだ、これ。警護のときは必ずこれをつけていけよ」
そう言って差し出されたのは、銀色の枠の中が金色で塗られた『SP』の文字を現すバッジを手渡された。
これが噂のSPバッジか。
まじまじと見つめていると、「偽造されないように、不定期に色変わるから。すぐ交換になるかもしれない。けど、無くすと報告書だからな。気をつけろ」と言われてしまった。
ちっ……せっかくSPになれたのだという感慨に浸っていたのに、無粋な先輩め。