溺愛モラトリアム 【SPシリーズ新城編】


警護課に戻る途中、新城さんからの質問に答えていると、足音が聞こえてきた。

向かってくるのは、班長、高浜さん、矢作さん、大西さんだ。


「あ、新城、ちょうど良かった。今から都知事の警護に行ってくるから」


何だって?都知事の警護?

さっそく任務か!と気合が入りそうになったのに……。


「俺たちは?」


新城さんが聞くと。


「他の班の補充だから、4人いればいいってさ。そういうわけで、お前たちは待機な。何かあったら連絡する」


班長は早口で言い、忙しそうに他のSPたちとその場から去ってしまった。

そんな。おいてけぼりだなんて。

がっかりしながらとぼとぼと特殊班の部屋に戻ると、新城さんが机の上に装備品の箱を置いて言った。


「現場に出たかったか?」

「そりゃあ、せっかく訓練を受けてSPになったんですから。早く一人前になって、成果を出したいです」

「真面目なんだな。大丈夫。警護課は人手不足なんだ。すぐにお呼びがかかるさ」


と言いながら、箱の中身を出して説明しだす。

無線機、手錠、警棒……どれも訓練のときに使ったことがあるもので、目新しさはなかった。


「そうだ、これ。警護のときは必ずこれをつけていけよ」


そう言って差し出されたのは、銀色の枠の中が金色で塗られた『SP』の文字を現すバッジを手渡された。

これが噂のSPバッジか。

まじまじと見つめていると、「偽造されないように、不定期に色変わるから。すぐ交換になるかもしれない。けど、無くすと報告書だからな。気をつけろ」と言われてしまった。

ちっ……せっかくSPになれたのだという感慨に浸っていたのに、無粋な先輩め。



< 9 / 279 >

この作品をシェア

pagetop