溺愛モラトリアム 【SPシリーズ新城編】
キョロキョロと周りを見回すと、見覚えのあるSPがいた。
この人たち、警視庁の他の班のSPだ。
そうか、バカ息子が招待されているってことは、父親がいても不思議はない。
「え、親父?」
バカ息子はくるりと振り返る。
私は他のSPたちに気づかれやしないかと、ドキドキしていた。
たとえ休日に無理やり連れてこられたとしても、こんな格好で飲酒までしている。
バレたら何を言われるかわかったものじゃない。
こそこそとバカ息子の影に隠れようと思ったけど、ヒールを履いているぶん、私の方が少し背が高い。よって頭が出てしまう。
「おお、無事でいたか」
外務大臣がバカ息子に話しかける。
きっと、自分だけでなく息子もテロリストに狙われていることを気にしているのだろう。
「お前もホテル暮らしなんか辞めて、家に帰って来い。母さんも心配している」
「えぇ……実家は息苦しいんだよなあ」
「どうせSPが四六時中見張っているんだから、女遊びも夜遊びもできまい。せっかく離れがあるんだから、帰って来い」
そうだそうだ、帰れ帰れ。
帰宅場所が一緒になれば、外務大臣についている班だけで警護ができるかもしれない。
特殊班は補助でいいじゃない。このバカ息子と24時間一緒にいるのは疲れる。