溺愛モラトリアム 【SPシリーズ新城編】
何か言いたげな顔でこちらを見たバカ息子を、きっとにらんで黙らせた。
その瞬間、ハッと息を飲むような音が聞こえた。
振り返ると、国分外務大臣が、眉間にシワを寄せ、目を見開き……まるで幽霊を見るような表情で私を見て固まっていた。
「あの……?」
「おい、親父?どうした?」
バカ息子に話しかけられ、外務大臣は我に返ったようだ。
何度か瞬きをすると、厳しい顔でこちらをにらむ。
「自分の立場を忘れるな。遊びでもなんでも、交際する人間は慎重に選ぶことだな」
「どういうことだよ?」
「SPだかただの小娘だか知らんが、国分家とつり合う家柄の女性としか、交際することは許さん!」
突然声を荒げた外務大臣。周りが何事かと振り返る。
周囲の視線を感じたのか、外務大臣はごほんと咳払いをし、声のトーンを下げた。
「とにかく、その女性とはこれ以上近づくことは許さん。早く実家に帰って来い」
「なんだよそれ。横暴だな」
「誰のおかげで国会中に寝ても何も言われないと思ってるんだ。今の生活を続けたければ、おとなしく私の命令に従うことだ」