溺愛モラトリアム 【SPシリーズ新城編】


「ちっ!」


目の前のウェイターの舌打ちで、我に返る。

はっと顔を上げると、彼は銃を持ち直し、こちらに向け、引き金に指をかけていた。

先読みの能力がなくたってわかる。

この人は、国分議員の命を狙っている。


「させない!」


大声を上げて立ち上がると、警察官たちやSPたちが、こちらに気づいたようだった。


「一ノ瀬さん!」


高浜さんの声が聞こえた。

その声より先に、私はウェイターの腕に抱きつくように飛びかかっていた。

引き金を引く瞬間だった銃口が、天井を向く。


──パン!


「ひいい!」


国分議員の悲鳴が聞こえたけど、私はウェイターの腕から銃を奪うことを最優先に動く。

彼のことは、他の特殊班のメンバーが守ってくれるはずだ。

ほら、もう彼らの足音がすぐそこに迫っている。


「新城!おい、新城!」


駆け寄ってきた高浜さんと大西さんが、国分議員を立たせて広間の外へと連れていこうとする。

倒れた新城さんには矢作さんが寄り添い、抱き起した。

その瞬間、別の場所からも銃声がした。

そうか、ここには国分外務大臣もいる。

きっと、二人を狙ったテロリストが、複数で会場に紛れ込んでいたんだ。


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