溺愛モラトリアム 【SPシリーズ新城編】
「新城さん!」
さっき撃たれたはずの彼は、手に警棒を持っていた。
驚いた敵の銃口が、彼を狙う。
しかし、それが火を噴く直前、新城さんはスーツのすそを翻し、敵の手首ごと銃身を打ち上げた。
銃声が響くが、銃弾は天上の方へと飛んでいく。
その行方を見守る暇もなく、新城さんは振り上げた警棒を両手で支えると、そのまま敵ののどに押し出す。
一瞬呼吸ができなくなったのだろう。
尻餅をついた敵は、苦しそうにのたうちまわりながら、気を失った。
その間にも、次の攻撃が新城さんを襲う。
放たれた銃弾を転がって避けた彼は、いつの間にか敵の足元に潜り込み、片膝をついたまま、両手で持った警棒を思い切りなぎ払った。
ぶんと空を切る音が聞こえたと思うと、警棒は敵の膝にめり込む。
「ぎゃあああっ」
男の太い悲鳴がこだまする。
膝を砕かれた彼は、思わず銃を落とす。
「くそっ……」
残されたウェイターが悔しそうにうなった。
そしてナイフを持ったまま、くるりと踵を返す。
逃げられる。
けれど、そんな予想に反し、彼の動きはぴたりと止まった。