あなたとキスをするまで
「はーい!むくろくぅ〜ん?コーヒーですよぉ〜!!」
きっちり30秒以内の5秒前には戻ってきたワタシはむくろ君の座る席の机にコーヒーを置いた。
「……ホット」
「うげげっ!!!すいません、すぐ買い直してきます!あ、それとも殺しますか?」
ワタシが買ってきたのは冷たいブラックコーヒーだった。どうやらむくろ君はホットがお望みでおられたようだ。
「黙れ」
「はい!買い直して来ます!」
ワタシは自販機がある所まで再び爆走する。
今度は5秒で戻ってきた。
「ふぅ…今度こそどうぞ!ワタシは冷たいの頂きますね〜」
むくろ君の隣でぷすっと缶をあけて飲もうとするが…。
「…あ、」
マスクしてると飲めねぇ。
むくろ君の前の前の席に座る美夜さんにワタシは声をかける。
「美夜さん、コーヒーの」
「美夜、ブラックむり」
「まだ言い切ってないのに!」
バッサリ言われてしまった。どうしよう…もう開けちゃったし、でもマスク取るわけにはいかないし…だからってむくろ君から離れてむくろ君の見えない所で飲むのもあれだし…。
「…なに、飲めないの?」
「いえ!飲みます!飲めます!!むしろワタシがコーヒーです!!」
「病院行ってこい」
「え、ワタシを心配してくれるんですか!?むくろ君優しいですねぇ〜!!うへへへへへ」
「……」
……なんかごめんなさい。だからそんな本気で嫌そうな顔しないで下さい。お願いします、はい。
というかほんと、綺麗な顔してるなぁ。まるでつくりものみたいで赤ちゃんよりもすべすべな肌だよ、そこらへんのべたべたかさかさした肌を持っている学生とは大違いだよ。うん。
綺麗な目だし、綺麗な鼻!鼻たっけぇ〜なぁ〜!今度むくろ君の3Dフィギアでも発注しようかな。それとも自分で彫刻作ろうか?いや、ダメだ。私芸術的センス皆無だわ。
ぐへへへへ、とワタシはむくろ君の顔を眺める。
「なんでマスクしてんの」
「え?ええ?!ワタシのお顔が見たいって?!」
「……そうだけど」
ほんっとに嫌そうな顔するなぁ〜。まあ、そこも可愛いんだけどさ。たまらなくツボなんだけどさ!
「……って、え?わ、わわワタシの顔がみ、みみ見たいの!?」
「静かにしろ」
いや!だ、だって!むくろ君が!!!
「…俺はお前の顔見て安心するんだよ」
「っ!!!!!…は、あ…ぅあ…はっ…」
もしかしてこれはデレというものですか!!!つ、ついに!!!!ついにむくろ君にもワタシの良さがわかったのですか!!!!ワタシでさえ、自分の良さがわからないのに!!!!
あ、あああ…あ安心するだなんて!!!
「お前みたいな顔に生まれなくて良かったって」
「……それは良かったです」
ゲスですね、分かります。