あなたとキスをするまで
「諦めろ」
「……ぬうぅ。でもぉ…っく」
さっきまでは頑張ろうって思ってたのに!今日こそは許可貰おうって!なのに…うぅ。
「イチコ、雑巾絞ってこい」
「ういっす。」
悲しくて涙が止まらない。もうダメだ…ワタシの心の中は土砂降りだ。明日地球は滅びる、世界なんて破滅する。きっとそうに違いない。いじわるだ、ワタシの楽しみを奪って…世の中はワタシを苦しめたいんだ、不幸にしたいんだ。
ううぅ…っ。
ビチョビチョ〜と、水道までやってきたワタシは雑巾を絞る。
「…っい、おい」
「ぬへ!む、むむむむむくろ君っ!?」
振り返れば、ワタシを無表情で見下ろすむくろ君がいた。
…って、いまワタシむくろ君に見つめられてるうぅう!?…うへへっ、やった!幸せ〜!!!!!むくろ君の瞳にワタシがうつってるよおぉ〜!!!!
「あっへ、うっへへ…じゅるっ」
「キモい、生まれ直して来い」
………すいません。いまチラッと鏡みたらワタシ凄い顔でしたね、ナメクジに触れた並みに鳥肌立ちますね。
「生まれ直すなら、むくろ君の子どもかお母さんが良いなぁ…うへ」
むくろ君は無言で踵を返し立ち去る。
「うわあぁあああ!!ごめんなさい!待って下さい、むくろ君!やっぱり生まれ直すなら…」
ワタシはあわててむくろ君を追いかけて前へ回り込みむくろ君の顔を見あげる。
むくろ君はクールビューティーに無言だ。
「…生まれ直すなら、むくろ君のお嫁さっ」
「死ね」
「まだ言い切ってないのにぃ〜!!!けっこう勇気使ったのにぃ〜〜!!」
ワタシの言葉はバッサリと切り捨てられた。
むくろ君はそんなワタシなんてお構いなしに無視をする。
何を言うのかと次の言葉を待っていれば、ワタシの横を通り抜けて歩き出した。
「3分以内に揚げチョコ3つ買ってこい」
「え、あ!はい!分かりました!!」
ワタシの地獄耳はむくろ君の声を逃さなかった。
ちなみに揚げチョコというのは購買の人気ナンバーワンのパンだ。中がチョコでとろとろ〜っとしていて周りはサクサクとしている。そしてこれ1人一個までと購入制限がある。
ワタシは行ってきまーす!と言って売店へ走りだした。