未知の世界2

その晩、家にあるもので晩御飯を済ませ、いつものようにリビングで話をして、寝るために早めに部屋へ行った。



コンコン



と音がすると、返事をする前に部屋の扉が開いて、先生が入ってきたのだ。




「その、、、昨日は悪かったな。




全然、眠れなかっただろ?」




と言うとベッドに座っていた私の前に来て、勉強机に備え付けられている椅子に座った。




「帰りに寝てきたし、もう大丈夫です。」




「また発作が出てもいけないから、診察するけどいいか?」



昨日のことがあったから、すごく控えめな先生。



いつもと違うから調子が狂っちゃうよ。




「いつもは勝手に診察するのに。」



とつぶやくと、



「なんか言ったか?」



と、いつもの調子に戻ってきた。




毎度毎度のことで、私は慣れているので、自らベッドに横になる。




自分で服をまくりあげる。




先生はいつも冷たくないように、聴診器を手で温めながら胸の音を聞く。



昨日のことがあるから、恥ずかしい。



胸の音がドキドキと自分にも聞こえていた。



一点を見つめて集中している先生。



「大丈夫だ。」



次は血圧と脈を一緒に計る機械に腕を通す。




その次は喉を見られ、首筋を触られる。



先生の暖かくて大きな優しい手。




この診察だけは嫌いじゃない。



何を触ってるのか、よくわからない。




いつか大学が受かったら、大学で教えてもらおう。




10分くらいで診察は終了した。




「最近は、順調だな。



だけど、受験前に、一度検診を入れるから。」



と先生が言う。



そんなの聞いてないよ。



「えー。嫌だな。」



とついこぼすと、先生は、




「ダメだ。知らない間に喘鳴が聞こえていたらいかんだろ。



今週は結構疲れただろ?



親父たちが帰ったら、検診を入れるからな。」



といい、私は仕方なくうなづいた。




それをみて、先生は私の頭を手でなぜた。



そんなことしたら、恥ずかしいよと思っていると、




「今日は寝れるか?また俺がそばで寝ようか?」




なんていたずらな顔で言ってくる。




もうやめてよ。また今日も眠れなくなったらどうするの?




「今日はしっかり寝たいです。」



と言うと、笑って部屋を出ていった。




先生に撫でられた頭を自分で触ってみる。



一瞬だけだったけど、すごく温かく感じた。

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