青蒼の夜半に、闇色の鳥を
 手にしていた暗剣を明後日の方向に無造作に放り投げ、一歩足を踏み出してラザーが長剣の鞘を払う。

 シェイスの持つ無骨な大刀とは違う。

 真っ直ぐな細身の、危ういほど鋭く研がれた代物だ。

「あんたに似合っているわね、その剣。

 あたしなら、そんななにもかも斬り捨てる気満々の武器なんて怖くて持てない」

「一応、褒め言葉として伺っておきます」

「先に云っておくけれど、あたし、あんたに危害を加えに来たわけじゃないわ。

 ねえ、廃王子サマ。

 そうお呼びすれば合格?」

 おどけて見せたシェイスに、ラザーの眉が潜められる。
< 105 / 264 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop