青蒼の夜半に、闇色の鳥を
「私のことを、好くご存知ですね。

 そして、あなたは無礼にも名乗るつもりはない、と。

 では無駄な会話は無用です」

「ちょっと……ッ!」

 斬り掛かろうとするラザーに顔を顰めて、シェイスは大きく後ろに飛び退いた。

 僅かな時差で、木々の梢が斬り払われる。

 一撃を横っ飛びに避けて、シェイスは力任せに剣を払った。

 刃が刃に抗する、耳障りな剣声が上がる。

「せっかちな男ね」

 にっと、余裕すら見せてシェイスが笑う。
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