青蒼の夜半に、闇色の鳥を
「……王から、なにを吹き込まれましたか?」

「別に。世間話を少々。

 ご自分の妻が聖女サマだってことと、聖女サマが聖女サマである所以を。

 あたしもあやかりたいって思ったわ」

 これは、冗談ではなく本心。
 彼女の話を聞いたとき、そんな方法があるのならば自分とて知りたいと切実に願った。

 『種』がある奇跡だと、理性ではわかっていたが。

 その次に、憤った。

 どうして罰しないのかと、ジャスパに詰め寄ったりもした。

 それでも、ジャスパ自身は拍子抜けするほど無関心だった。

 波風を立てる気などさらさらないとわかった。

 だから、シェイスにも関係のない話。

 いま、この状況――王の死を引き起こしたのがその彼女ではないとするなら、だ。
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