青蒼の夜半に、闇色の鳥を
 刃を交えていても、目の前の人間はひどく遠い。

 命のやり取りをすることに馴れたシェイスには、その距離感が気持ち悪かった。

 肉を叩き潰す感触、己の身体に刻まれる傷、血の匂い。

 どれも、一瞬だけ相手との距離を縮めてくれる。

 勿論、それが好いことだとは云わない。

 だが、馴れた感触と近くて異なる違和感が、シェイスの腕を鈍らせる。

 白い顔に、金色の髪。

 至近距離から眺めるラザーは、父親に好く似ていた。

 父親と同じ顔で、父親よりも心の決まった表情で――シェイスを、哂う。
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