青蒼の夜半に、闇色の鳥を
 階段を駆け上がる靴音が聞こえたか聞こえないか。

 シェイスは四方に視線を巡らせ、安全な逃げ道はないことを知る。

 強いて云うなら、薄く開いた窓か。

 どれほどの高さがあるのかを考えると、眩暈すら覚える。

「ねえ、聖女サマ。

 願いを叶えてくれるんだっけね」

 やけくそになって呟いた台詞。

 シェイスは開き直って、強張った頬に無理矢理ふてぶてしい笑みを貼り付けた。

「あたしのこと、匿って」

 一瞬の、空白。シェイスの喉が大きく上下する。
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