青蒼の夜半に、闇色の鳥を
「あんたたちも変わらないわねえ。

 好く飽きないものだわ」

 サディマの台詞には苦いものが滲む。

 横目で見遣って、皮を剥いた果実にアギが齧りついた。

 顔の表情がわかりにくいのもまた犬めいている。

 無表情なわけではない。

 犬の感情表現なんて、犬にしかわからない。

「別に、飽きるようなものじゃない」

 真面目な口調で、とつとつと話す。

 アギが雄弁なのはシェイスに向かっているときだけ。

 特に怒鳴るときはえらく滑らかに舌が動いている。

 だが基本的に、アギは無口で朴訥な青年だった。
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