青蒼の夜半に、闇色の鳥を
「ただ、俺はあれに、機嫌好く笑っていて欲しいだけだ」

 表情も変えず、当たり前のことのようにアギは語る。

 シェイスに惜しみない情を与える。

 見返りを要求しない情。

 それが、女であるがゆえに虐げられてきたシェイスには、理解できない。

 サディマ自身、アギの実直さよりもシェイスの迷いの方が近しく感じられる。

 どちらにしてもひどく、もどかしい関係だ。

「本当に無欲な男だね、あんたは」

「いいや。欲は人一倍ある。

 心底、そう思う」

 果汁で濡れた指を舐めながら、アギは肩を竦めた。
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