青蒼の夜半に、闇色の鳥を
「中原の北の山地にはアッバース神殿。

 この神殿にそう……一七年程前に生まれたのがアッバースの選び姫。

 契る者に覇王を座を与えると予言された巫女姫シャリカ・サリエだ」

 教師のようにジャスパは語り続ける。

 生徒であるところのシェイスもまた神妙に耳を傾ける。

 恋人ではない。

 血族でもない。

 熱のない距離感が、シェイスには心地好かった。

「衰退した古王国の滅亡が混乱に拍車を掛けた。

 中原の小国はこぞって巫女姫を奪い合い兵を動かす。

 疲弊するのは民ばかり」

「流民も増えた。

 交易路を通じて流れ込んでくる移民は、あたしたちの土地まで無闇に耕して、作物を植える。

 結果として、あたしたちまで追われる。

 物凄く迷惑だよ」
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