青蒼の夜半に、闇色の鳥を
「兄上」

 意地になって口にする呼び名。

 こころからは剥離して、薄っぺらくふわつく。

「兄上の希みは、なんだ?」

「なんですか、いきなり」

 温かな茶を差し出しながら、困ったようにラザーが首を傾げる。

 残酷な気持ちでウルジャスは笑った。

「片目を失い、地位を失い。

 一回り以上年下の才気なき弟と、衰退の一途を辿る国に仕える。

 将来の希望も、未来の栄達もない。

 そんな兄上の願いとはなんなのか興味がある」

 こんな言葉だけはすらすらと唇から零れていく。

 口篭りながらどうにかしてこころを傾けて欲しいと願った時間の、なんと無意味だったことか。

 ウルジャスは笑い転げたくなってきた。
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