青蒼の夜半に、闇色の鳥を
 肉厚な剣とまともに打ち合わせたために、みるみるラザーの刃が零れていく。

 きらきらと、破片が宙を舞う。

「抜かしな。

 あんた、なにを加減している?

 あたしになにをやらせたいの?

 踊らされるのはもう、御免なんだよ!」

 無防備な身体を晒されても、シェイスはむきになって刃だけを追う。

 なぜだか、この男はシェイスに斬られることを希んでいるよう。

 そんな役割を勝手に振られて、操られるのは真っ平だった。

「死にたいのなら、ひとりで死んで」

 吐息のように、囁く。

 ぴたりと、ラザーの動きが止まった。

 勢い余って空いた腹をなぎそこなった刃を、シェイスは慌てて全身で押さえ込んだ。

 呑み込んだ力が、逆にシェイスを振り回して殺される。
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