青蒼の夜半に、闇色の鳥を
 ――嫌だ。駄目。

 シェイスは居心地の悪さに背筋をぞくぞくさせながら、きつく唇を噛む。

 操られている。

 これだけ広い聖堂のなか、いるべき人物はウルジャスとラザーだけ。

 雁字搦めに設定された場で、決め事のようにふたりは会話を交わしている。

 いま、ラザーの選んだ役者は完全に、シェイスからウルジャスに移ってしまった。

 蚊帳の外は外なりの冷たさで、シェイスを凍えさせる。

 ――これは、茶番。

 きっと、偽りの終幕はひどく酷なものになる。

 不吉な匂いがする。

 これ以上の不幸など、飲み込みきれない不可解な死など見たくもない。

 舞台に上がった人間が流す、遠い血など要らない。

 積み重なる屍が必要ならばいっそ、この手で殺してやるから。
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