青蒼の夜半に、闇色の鳥を
 侍女の姿をしておりながら、彼女――アガサの主は、王ではない。

 目の前の、しおらしく両手を合わせる年下の少女だ。

 彼女の願い――命に、逆らえるものではない。

 アガサは、肩から垂れ下がる濃い灰色の薄紗の隠しから小さな小瓶を取り出した。

 すっと、シェイスの表情が凍る。

「これが?」

「そうです。王が最期に香炉で焚いた香です」
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