青蒼の夜半に、闇色の鳥を
 死の理由は、蛮族の長姫。

 だが腐っていたのは王自身。

 死は、彼自身の意思だとウルジャスには割り切れる。

 だが、知ればシェイスは苦しむだろう。

 迷惑な父だった。

「王は、蛮族の小娘とやらをどう想っていたのでしょうか」

「知らぬ。わたくしは願いを叶えるだけの存在だ」

 素っ気なく、インシアが突き放す。

 運命の女神アッバースの巫女として、

 幸運をもたらすために辺境の国へ嫁いで来た女。

 誰も知人のいない異郷で彼女が生きるためには、求められる役割を果たすしかなかった。

 そう考えれば恨みよりも、憐れみが先に立つ。

 もう、恨みなど感じるほどの情を傾けうる相手でもなかった。
< 240 / 264 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop