青蒼の夜半に、闇色の鳥を
「……シェイス・リン」

 なにも知らず、己の影を追い掛けていた少女。

 気紛れであれ、父王が求め、手に入れられなかった女の名。

 ――ウルジャスのこころは、決まった。

「俺も王と同じ賭けをすることを、あなたに……アッバース女神の巫女たるあなたに誓いましょう。

 もし俺も賭けに負けたのなら、王に渡したものと同じ代物を俺に。

 そうでなければ」

「そうでなければ?」

「あなたが、それを受け取れば好い」

 にやりと、ウルジャスは笑う。

 女神の神威を借りてひとを操るなら、己も踊れば好い。
< 241 / 264 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop