青蒼の夜半に、闇色の鳥を
「誰かの運命を揺らし、歪め、動かすためだけに仮初の神託を紡ぐ。

 ひとの願いを叶え、ひとを殺し、罪の穢れを呼ぶ。

 運命の女神アッバースの使徒として、それだけしか知らない哀れな巫女殿。

 ねえ、母上。

 そもそもあなたの願いはなんなのですか?」

「……わたくしの、願い?」

「そう。ささやかでも、叶ったものでも、諦めたものでも。

 あなたの、本当の希みは? 女神は、それを叶えてくださったか?」

 叶わぬ願いが返って来ることを期待しながら、訊ねる。

 インシアは窓の外に視線を投げ。

 ウルジャスの顔の破片ひとつひとつを取り上げるように見詰め、そうして。

 ふっと、緩い笑みを浮かべた。
< 243 / 264 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop