青蒼の夜半に、闇色の鳥を
「わたくしの願いは、とうに叶えられたもの」

 甘い、柔らかな微笑み。

 人形めいたすべらかで冷たい顔に不似合いな表情に、ウルジャスは一瞬見惚れた。

「わたくしの願いは、叶えられた」

 もう一度、その響きの甘さを味わうように、インシアが囁く。

「あなたの願いとは……?」

「云う必要のないこと。

 お前が、知るべきではないもの」

 放り捨てるような答え。

 それを残して、インシアはふらふらと寝台に歩いて行く。

「わたくしの願いなど、ほんのささやかなものだった」
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