青蒼の夜半に、闇色の鳥を
・2・
目を醒ましたのは、薄暗い天幕のなかだった。
身体が水で満たされた皮袋のように重く、指一本動かない。
自分の意思で動く目だけで、『彼』は周囲を窺った。
「あ、気が付いた」
天幕の隅、煮炊き用の泥を固めた竈の前にしゃがみ込んでいた少女が、甲高い声を上げる。
一〇歳くらいだろうか。
褐色の肌をした、見知らぬ子供だった。
「姫さまを呼んでくるね。ちょっと待ってて」
「待て……」
あどけなく告げて、ぱたぱた走り去っていく。
呼び止めようと身動ぎした隙に、皮膚が攣れるような鈍い痛みが右肩から走った。
身体が水で満たされた皮袋のように重く、指一本動かない。
自分の意思で動く目だけで、『彼』は周囲を窺った。
「あ、気が付いた」
天幕の隅、煮炊き用の泥を固めた竈の前にしゃがみ込んでいた少女が、甲高い声を上げる。
一〇歳くらいだろうか。
褐色の肌をした、見知らぬ子供だった。
「姫さまを呼んでくるね。ちょっと待ってて」
「待て……」
あどけなく告げて、ぱたぱた走り去っていく。
呼び止めようと身動ぎした隙に、皮膚が攣れるような鈍い痛みが右肩から走った。