青蒼の夜半に、闇色の鳥を
 無言で逃げた背中に、アガサは肩を竦める。

「どうせ、すぐに見付かっちゃうと思いますけどね。

 姫様は、兄さんを舐めています」

 ――アガサの兄は、迷惑なほど長に忠実な犬。

 エンカラン一愚直な番犬なのだから。

 意地悪い笑みを孕んだ言葉に、答える影はもうなかった。
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