青蒼の夜半に、闇色の鳥を
 戦乱に揺れるこの時代にあっては、玉座は苦労ばかりの貧乏くじ。

 次のくじの引き手であるウルジャスは、そんなふうに想像するだけだ。

 憐れみの気配はあれども、その情がウルジャスのこころを揺らすことはない。

 手に触れられない存在ならば。

 泡のように消え失せても、生きてどこか見えない場所で息をしていても、ウルジャスには関係ない。

 子供の頃飼っていた犬が死んだとき。

 そして、五年前の『事件』の方が余程、ウルジャスを打ちのめした。

 いまは静かに、人形をながめる心地で、かたちばかりの祈りを捧げている。

 先日一五歳の祝いを迎えたばかりの、ただひとりの王の後継者として。
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