青蒼の夜半に、闇色の鳥を
 両肩に手を置き、諭そうとしたラザーを、ウルジャスは振り払う。

 そのとき、視界の隅を掠めたのはひときわ大きい白い聖像。

 棺を見下ろすように、聖堂内を支配するように最奥に据えられた女の白い姿。

 ――運命の女神アッバースの彫像。

 取り澄ました横顔が誰かを思い出させて、とっさにウルジャスは杯を掴み、その顔面に投げ付けていた。

 派手に杯の中身を撒き散らし、銀の茶器が飛んでいく。
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