青蒼の夜半に、闇色の鳥を
 空耳ではない。

 なにかの歯車が噛み合い、古い石壁がこすれる音。

 天井の高さが災いして、やけに大きく響く。


 ――そして音にふさわしい、予想外の状況。


 ぽかんとウルジャスは口をあけて、その光景を見ていた。

 無意識に、己の身に危険は及ばないと高をくくってもいた。

 ここは王宮の奥津城。

 そして己は殺される価値もない、無能で幼い王位継承者。



 呆けたまま見上げるウルジャスの前で。

 扉の左右を護る身の丈ほどの彫像の片方が、ずるずると滑り始める。

 ぽっかりと空いた、小昏い空間。

 そこから細い人影が吐き出されるまで、それほど時はいらなかった。
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