青蒼の夜半に、闇色の鳥を
 塔の入り口で衛兵に鍵を借り、磨り減った螺旋階段を昇り切ればそこは、高貴なる咎人の居城。

 石造りの壁に、空恐ろしいほどの高みに向かい開かれた窓。

 いつものように、インシア・サリエはささやかな窓辺に座っていた。

 左の肩を心持ち落とし子供のように肘を着いて、王宮を見下ろしている。

 ラザーよりも二つ年上。

 だが、ラザーよりも若く――あどけなく無垢に見える貴婦人。
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