青蒼の夜半に、闇色の鳥を
 少女が、ゆっくりと口を開く。


「エリア・ファーレリアの王が死んだと聞いたわ。本当に?」



 乾いた声が、乾いた唇から漏れる。

 ウルジャスの知る女の唇は、紅で鮮やかに彩られているものばかり。

 少女の唇は褪せ、砂に焼けた薄紅色をしていた。



「本当だ。ここで眠っている。もう二度と目覚めない。

 狸寝入りじゃなければな」



 ウルジャスは乱暴に片手で大理石の棺を叩く。

 ウルジャスの無礼な振る舞いに、少女の片眉が不快げに跳ね上がった。
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