青蒼の夜半に、闇色の鳥を
「シェイス・リン」

 恐る恐る、ウルジャスは彼女の名前を呼ぶ。

 ぴくり、と強張った肩が動き、細い糸を辿るように視線が絡まっていく。

 ゆるゆると腕が持ち上がり、ウルジャスの灰色の髪に触れ――そして、毟らんばかりの勢いで掴み取る。

 ウルジャスの指が、己の前髪を鷲掴みにしたシェイスの手に触れる。

「……違う」

 吐息のような、嘆きのような、呟き。
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