青蒼の夜半に、闇色の鳥を
 漆黒の眸が、ウルジャスを睨みすえる。

「中原から交易路に沿って、放牧をするエンカランの暮らし。

 『巫女姫動乱』にかき回されて、最近は放牧地まで中原の民が掘り起こし耕していく。

 どんどんどんどん生きる場所が狭められて、交易路を行く商人の護衛めいた仕事もしたりして。

 城市の人間の顔色を伺って、国々の権力争いに耳をそばだてる。

 草原を焼かれたら、あたしたちは一貫の終わり。

 どの国にも属さずそれゆえにどの国にも守られず、不羈の民だと空見得を張る。

 そんな不確かな暮らしを、してみる?」
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