青蒼の夜半に、闇色の鳥を
 露悪的な口調。

 歪められた唇。

 苦しげに、寄せられた眉。

 ――誰かを、思い出す。

「シェイス・リン」

 名前を呼べば、半分己のなかの泥沼に使ったまま、半分だけの心でウルジャスを見遣る。

 横顔しか眺めたことのなかった、名ばかりの父の面影が重なる。

 傾き崩れていくなにかを必死で食い止めようとする人間の顔だ。

 零れていく運命に、どうにかして抗おうとする足掻きだ。
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