青蒼の夜半に、闇色の鳥を
「ふうん……」

 中原で生を受けた、覇王選びの神託を抱くアッバースの巫女姫。

 彼女を獲得せんと争う国々の戦――『巫女姫動乱』は、中原を越えて近年では辺境まで荒らし始めていた。

 交易路を渡りエリファを訪れる旅人の数はここ数年で激減。

 それ以上に、中原の戦火のきな臭さは風に運ばれ、エリファまで届く。

 荒み始めた、エリア・ファーレリア。

 ジャスパ王は滅びを退けるために努力した。

 足掻いて足掻いて――そして、絶望した。

 いま、目の前にいる少女も、同じ追い詰められた眸をしている。
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