青蒼の夜半に、闇色の鳥を
 ――でも、ありがと。

 そう云って、軽く一瞬、抱き締められる。

 シェイスの身体は、誰のものとも違う匂いがした。

 乾いた、風の匂い。

 ――先約とはなんのことか。

 誰と交わした約定に、縛られることを希むのか。

 そんな問いが喉許までせり上げてきたのにウルジャスは結局、なにも訊けなかった。
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