~君は死んで、僕は読書~
彼女の病室が片付けられるのは、思ったよりもずっと早かった。

私物が少なかったっていうのもあるんだろうけど。

これじゃあ、ずっと一緒にいた彼女は、本当に薄っぺらい存在だったのかと、痛感させられる。

細くて病弱で白くて……小さかったなぁ、君。

それなのに、どうして僕の心に冬だけ残して、消えてしまうんだ。今は夏だよ、ずれちゃうよ。

「ぽ、ぽ、ぽてち……ぽてちはおいち♪」

ほら、僕は君のうたを覚えてしまったよ。

それだけ君は、その儚い存在で、僕を虜にしたんだ。

どうして、なぜ、死んだのかな。

「なにを言ってるの、いまさら?」

と、唐突に声がした。

彼女がいた病室でボウッと本を読んでいた僕は、驚く。

振り向くと、彼女が、僕の後ろに立っていた。

白い白い姿で。

たぶんきっと、幽霊という存在で。
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