【完】R・U・I〜キミに、ひと雫を〜
「お前!急に飛び出したかと思ったらこんなとこで……でも、無事で良かった、ホントに良かった」


まさか強気な里佳子がこんな行動をするなんて、あんな顔をするなんて思っていなかった。


私に抱き着いた里佳子は小刻みに震えていて、大袈裟だけど、本当に私を心配してくれていることが伝わる。


里佳子だけじゃない。上にいる、嶋山成や楠本燭、ヒューマノイドの筈のルイだって。


心を、感情を捨ててはいなかったことを自覚した私は、これを何とも思えない人間じゃない。


「ごめんね……ありがとう」


「笑里、お前、やっぱり」


呟いた私に性急に顔を上げた里佳子は、小さな掌を私の両方の頬に添えて、目をまん丸に輝かす。


「さっき部屋でもちょっとびっくりしたんだけど、笑里、笑ってる」


「笑ってる……私、が?」


「他に誰がいるんだよ!笑ってるじゃん!っていうか笑うと可愛い顔になるじゃんちくしょー」


まくしたてるように言葉を放った里佳子、また私の肩口に顔を埋めて、額を肩にぐりぐりと押し付けてくる。


そうか、私、笑うことが出来る。里佳子や、嶋山成や、楠本燭、そして、ルイのおかげで、喜ぶことを思い出したんだ。
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