【完】R・U・I〜キミに、ひと雫を〜
「詳しい事は説明出来ないけれど、ルイはある目的の為に造られた子なんだ。量産出来る代物でもないし、量産するつもりもないよ」


確かに、優雅に長い脚を組んでまったりと紅茶に舌鼓を打つルイを量産出来るとは到底思えない。


ルイはカップを置き、その生きているかのような瞳を私に真っ直ぐ向ける。


ああ、濁りの無い綺麗な瞳。この瞳は、私に唯一しつこく接してくる嶋山成に似ているけれど、彼とは違う、何も知らないからこその美しい瞳。



「ボクはお父さんが課した事を成し遂げるだけだよ。その為にエミリ、キミの傍にいさせてもらうから」


お父さんがルイに組み込んたそれが何なのか、私には分からない。でも、それを成し遂げる為には私の傍にいなければいけないと、無知な美しい瞳が訴える。


「何が目的かは存じ上げませんが、私の生活の邪魔にならなければそれで良いです」


「そう。なるだけ配慮するよ」


例えどんな目的を成し遂げようとしていても、私には関係ない。


何故なら、そもそも私はこの世界に存在しているようで存在していない一個体でしか無いのだから。
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