【完】R・U・I〜キミに、ひと雫を〜
「話しても御堂さんが欲しい情報は持っていませんよ?私とルイは親戚と言うには遠いし、彼の事を特別知ってはいませんし」


「は?そういう事言ってんじゃねえんだわ。アタシとか皆が話し掛けてるんだから答えろって言ってんの。別にアイツの事が知りたきゃアタシならお前になんか聞かねーで本人に話しかけるし」


粗雑にイヤフォンから手を離した彼女は、私の眉間にに細く尖った爪をトントンとぶつけて挑発的な態度を取る。


御堂里佳子が何をしようが、クラスメイトはおろか他のクラスの人だって止めようとはしない。


そういう決まりががここでは成り立っている。御堂里佳子はそれだけ強い。


けれど、その決まり事のある世界の外に居る私には、被害という被害は今まで無かった。


理由は単純明快なもので、私はその世界の頂点にいる者に何をされようとも動じないから、虐めたところでつまらない。それなら最初から含む必要が無いと認知されていたのだろう。


だが、除外していた存在とはいえ見下している事には変わらない。


彼女の言葉からは「私達がお前ごときに話し掛けているのだから」という裏の感情がひしひしと伝わる。


こういった思いは、多分感情があるから膨らむ怒りであり、驕りである。


だから、それを不要だと手放して失った私は目の前で目尻と眉を吊り上げる彼女を見ても、結論としてはどうとも思わないのだ。
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