【完】R・U・I〜キミに、ひと雫を〜
結果、怯える事も無ければ、引く事も無い。
濁った瞳で彼女の気の強そうな真っ直ぐな瞳をじっと見つめる。彼女は自分の感情に素直なだけなのだ。私は、彼女を尊敬すらしてしまう。
「ホントお前、腹立つ!」
そんな風に返されたのは初めてだったのだろう。御堂里佳子はカッと目を見開いて、性格には合わない細く長い指の付いた手を振り上げる。
感情は失っているけれど、痛覚を失っている訳ではない。
降り掛かるであろう痛みに耐える為に、私は反射的に目を閉じた。
……けれど、いくら待ってもその痛みとやらは私には訪れなかった。
そっと瞼を開くと、そこには奇妙な光景が広がっていて。
「ルイ?」
見えるのは、華奢な腕がその振り上げた手を止めている姿と、止めに入ろうと立ち上がったのだろうか、一歩手前で固まった嶋山成の姿。
「体温と呼吸の指数が平均を越えているみたいだね。ねえ、一体どんな事を言えばこんなに人を怒らせられるの?エミリ」
ルイにとってすれば、初めて触れる人の怒りだったのだろう。悪びれもなく言い放った一言に、周りの空気が更に凍る。
「あの、御堂さん、ルイはこれまで人と殆ど関わらない、そう、それはもう広大な田んぼと少しのお年寄りしか視界に入らない田舎にいたんです。嫌味では無いと、思いますよ」
フォローのつもりだったのだけれど、御堂里佳子の顔はみるみる赤く染まり、ルイの手を振り払って自分の席へと戻って行った。
濁った瞳で彼女の気の強そうな真っ直ぐな瞳をじっと見つめる。彼女は自分の感情に素直なだけなのだ。私は、彼女を尊敬すらしてしまう。
「ホントお前、腹立つ!」
そんな風に返されたのは初めてだったのだろう。御堂里佳子はカッと目を見開いて、性格には合わない細く長い指の付いた手を振り上げる。
感情は失っているけれど、痛覚を失っている訳ではない。
降り掛かるであろう痛みに耐える為に、私は反射的に目を閉じた。
……けれど、いくら待ってもその痛みとやらは私には訪れなかった。
そっと瞼を開くと、そこには奇妙な光景が広がっていて。
「ルイ?」
見えるのは、華奢な腕がその振り上げた手を止めている姿と、止めに入ろうと立ち上がったのだろうか、一歩手前で固まった嶋山成の姿。
「体温と呼吸の指数が平均を越えているみたいだね。ねえ、一体どんな事を言えばこんなに人を怒らせられるの?エミリ」
ルイにとってすれば、初めて触れる人の怒りだったのだろう。悪びれもなく言い放った一言に、周りの空気が更に凍る。
「あの、御堂さん、ルイはこれまで人と殆ど関わらない、そう、それはもう広大な田んぼと少しのお年寄りしか視界に入らない田舎にいたんです。嫌味では無いと、思いますよ」
フォローのつもりだったのだけれど、御堂里佳子の顔はみるみる赤く染まり、ルイの手を振り払って自分の席へと戻って行った。