【完】R・U・I〜キミに、ひと雫を〜
私はルイお手製のお弁当を、成は購買で買い占めたらしいパンとおにぎりを手元に、保健室の机を借りてそれぞれ食べ始める。


目の前の成はやはりいつもの成で、ルイや燭のようや美形というよりは、庶民的で親しみやすく幼げな可愛らしい見た目で口いっぱいにパンを頬張っている。


「むふ?んくっ……笑里、どうしたの?今日はやけに俺の事見てるね。やだなぁ、照れるじゃん」


「や、その、何でもないような、何でもなくない、ような」


きっと心に引っ掛かっている事を成に尋ねてしまえば、成と築いた関係性が変わってしまう気がして、聞けずに口篭る。


誤魔化すように口に運んだ卵焼きは、甘い味じゃなくて出汁のしょっぱい味がした。


そんな私に成は困ったように目尻を下げて、微笑んでお茶のパックを喉を鳴らして飲む。


口を離し、男性にしてはぷるりと瑞々しく丸みを帯びたその唇が、空中に鮮やかな色を灯す。


「もしかして、気付いた?俺の欠陥。上手く隠してたんだけどなぁ。朝のはちょっと、俺にはキツかったかも」


「けっ……かん?」


それは、どういう意味?この小さなピラミッドの頂点の神様の成に、一体どんな欠陥があると言うのだろうか。


目の前の鮮やかな色をポツポツと灯す成と、今朝の無でしかない成るが脳内でダブっては離れ、ダブっては離れ、リフレインする。
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